口内洗浄剤について

口内洗浄剤について

口腔内細菌は浮遊しているもの以外歯や歯肉、歯肉溝の表面に付着し、積み重なり、バイオフィルムという立体的な膜を張り、その中でコミュニティをつくり情報交換をしながら存在します。このバイオフィルムという膜が非常にやっかいで、抗菌剤や抗体を通しにくく、なのでバイオフィルムを剥がさないまま薬を塗っても細菌には届きませんし、効果がありません。まずはこのやっかいなものを機械的に取り除かなければなりません。ようするに毎日の歯磨きや歯科医院で専門的に取り除いた後、抗菌薬の投薬などを行なわないとバイオフィルム内に生息する細菌に対してはアプローチできないということです。

バイオフィルム

機械的に取り除かないで、うがい薬だけではどうともならないということです。が、しかしそれがまったくの無意味なものでもありません。

以前読んだ論文データでは ネオステリングリーン(歯科医院で処方できます)、イソジン、コンクール、アズノールうがい薬という洗口剤で虫歯の病原菌と歯周病原菌を使用して浮遊している遊離細菌とバイオフィルムの細菌増殖抑制効果をそれぞれ検証していました。

ネオステリングリーン

結果をいうと浮遊菌に対しての効果はどの洗口剤も効果を示したのですがネオステリングリーンがすべての菌種に対して一番効果があり、すべての菌種の菌残存率が高く抑制効果がみられなかった洗口剤は抗菌作用をもつ成分のないアズノールうがい薬だったようです。

ネオステリングリーンの主成分はベンゼトニウム塩化物で広い抗菌スペクトルと強力な殺菌作用が特徴です。低刺激なので粘膜や創部の細菌感染予防目的の使用が多くベンゼトニウム塩化物は歯肉炎関連細菌に対して殺菌作用を有することが報告されています。細菌増殖抑制にもベンゼトニウム塩化物の殺菌作用が関与しているものと考えられます。

バイオフィルムに対しては一番細菌増殖抑制効果がみられたのはコンクールだったようです。

一方ですべての菌種の菌残存率が高く、抑制効果がみられなかったのはネオステグリーンだったようです。浮遊菌に対しては効果を示すネオステリングリーンもバイオフィルムにおいては細菌増殖抑制効果がみられず、菌の増殖がみられたようです。バイオフィルムに跳ね返されたということですね。

コンクール

だからネオステリングリーンをうがい薬として使う時は洗口する前に機械的プラークコントロールを徹底してしなければならないということです。でないと効果が薄い。

ではすべてコンクールでいいではないか。と、そうはいきません。コンクールにはグルコン酸クロルへキシジンが配合されています。この副作用に長期投与すると歯の表面に茶渋のように着色してくるというものがあります。審美が気になる人には向きませんね。審美も歯肉が健康でないと、何が審美だと思ったりもするので、関係ない気もしますが。だから口腔内環境が整っていて歯、歯肉ともに問題のない状況にあれば、着色などのないコンクールではなく浮遊菌に対して効果の高いネオステリングリーンがいいのではないでしょうか。ネオステリングリーンに含まれているのはベンゼトニウム塩化物でグルコン酸クロルへキシジンは含まれていません。

グルコン酸クロルへキシジンについて少し。グルコン酸クロルへキシジンには長期投与ににより着色がみられるという特徴以外にちょっとした歴史があるのでお話しておきます。日本では1980年代に膀胱・膣・口腔などの粘膜や創傷部位に使用してアナフィラキシーショック(急激な血圧低下、呼吸困難、全身発赤等)が発現したとの報告がされ、口腔粘膜への使用が禁忌になりました。このアナフィラキシーショックを起こした例のほとんどが適正濃度を超えた0.2%~1%での使用だったらしいく、近年でデータの報告書を読んでいると歯科ではなさそうですが適正濃度での使用でもショックが起こった事例があがっていました。血管内に直接や小血管から経静脈内に体内に混入したとか書いてはありますが、グレーですね。口腔内にも血管はあるわけですから、危ないものは使えません。しかし歯周病菌、Pg菌,Aa菌という歯周病に関わらず、インプラントのリスクや管理に対しても、口腔環境の管理を考える上で、本当にやっかいな菌たちがいるのですが、Pg菌、Aa菌に関しての細かくは、歯周病のことを書く時に書くとして、濃度が0.12%~0.2%のグルコン酸クロルへキシジンは有効とされているので、日本以外の他国、アメリカなどでは今でも第一選択薬となっているようです。日本では使用できません。コンクールに含有されている濃度は0.05%です。安全を第一に限りなく薄められています。

グルコン酸へキシジンは危険ばかりではありません。もっとも優れているところは適用時に殺菌力を発揮するのみならず、皮膚、粘膜に残留して持続的な抗菌作用を発揮するという点です。コンクールのグルコン酸クロルへキシジンの濃度は0.05%と低いので、過去の事例を調べてみても問題は起こっていなく、使用は大丈夫です。しかし濃度がないのでこの使用だけで菌を抑えきることは不可能です。細菌の増殖抑制効果はこの濃度でもあったということなので、歯周ポケットの深い中等度から重度の歯周病の方が洗口剤として使用するのは有効だとは思います。

ドラッグストアなんかでよく売っているリステリンはどうなんだ? というのも書きましょう。

リステリン

リステリンの殺菌力は長時間にわたって放出し続ける能力は低いものの、ブラッシングと併用することにより歯肉炎に対する効果があるようです。でも持続性と殺菌効果はコンクールと比較して明らかに劣ります。

要するに、

  • 口腔内環境が病的ではない人
    しっかり磨いてからのネオステリングリーン。
  • 歯並びががたがたしていて磨いてもプラークが残ってしまう人。衛生士さん、歯医者さんから、いくら磨いても、プラークが残っていると、なかなか褒められない人。審美を考える前に環境を治さなければならない人。歯周病に不安を抱える人。
が、良いと思います。

うがいは大まかな汚れを洗い流すという効果があります。特に歯の間をジュクジュクと通すようなうがいをすると更に効果があるのではないでしょうか。洗口剤を使用しないうがいでも、私は効果は大きいと考えています。唾液が同じような役割を果たすのですが、唾液の少ない人、少なくなってきている人は、特にうがいの回数を増やすことをオススメします。その際は、洗口剤を自分合った物を使いましょう。わからなければ、歯医者さん、衛生士さんに聞いてみてください。

唾液の働きについてもまたいずれ書くとしましょう。

2020年12月 最新の口内洗浄剤

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